★皇帝の鍼師が教える・鍼の原始の姿 その①★

鍼灸の原始の姿。
それは紀元前260万〜30万年前の旧石器時代まで遡ります。

原型はハンドアックス(石器)を使った放血治療でした。
鍼といえば金属を思い出しますが
起源はなんと「石」なんですね〜びっくり!

ではなぜ
鍼灸治療のオリジナルである放血治療が
発見されたのか詳しく見ていきましょう。

【狩猟時代のキモは”数”】

当時の人間の祖先はまだそこまで多くもなく
狩猟を主としたライフスタイルをとっており
集落を作って暮らしていました。

人類はまだ農耕をしておらず生きていくためには
狩りに出て獲物を取ってこなくてはいけません。

狩猟では大小様々な動物たちと格闘していくのですが
そこで問題になってくるのが狩りに行くことのできる「人数」です。

その集落が生き延びれるかどうかは
次の狩りにどれだけの人数を送りだせるかに
かかっていました。

すなわち出猟できる人数が
その集落の命運を握っていました。

万が一ケガなんかして狩に出る人数が減ると
獲物を獲る率が低くなる=滅亡確率が増えるという
のっぴきならない事態を意味していました。

【医学の進化は戦いの歴史???】

そんなまだまだ厳しい状況下で
私たちの祖先がどうやってケガを治し
どうやって狩の人数を確保するかに
頭を悩ませていたかは想像に難くありません。

この問題は
時を変え場所を変えて続いていたようです。
つい近代でも同じ展開が見られました。

大きい戦争が立て続けに勃発した18末〜20世紀に
外科手術を核とする現代の医術である西洋医学が
急速に発展した姿とかなり重複します。

その観点から見てみると意外とこの人手問題、
人類の永遠のテーマなのかもしれません。

まさに歴史に学ぶとはこういう事ですね。

【ケガした2人の運命】

さて、
各集団が己の生存率をかけた厳しい生き残りに
血眼になっている中とある発見がありました。

ある日、同じ程度のケガを負った村人が
2人狩りに行けずに傷を癒していました。

しかしこの2人
回復の早さが全く違いました。

【ケース1:ケガ人Aさんの場合】

ケガ人の1人、Aさん(30代・男性)は
まったく熱や腫れが引かず
息もたえだえ死の淵をさまようような高熱。
なんとか1ヶ月後にやっと回復しました。

こうなると狩りどころではなく
労働力の頭数には入れられません。

このような傷病人が集落に増えるのなら
まとまった人数を狩猟に出せなくなるので
かなりの非常事態になります。

こんな現実を見るにつけ集落の人々は
自分たちの将来に本能的な恐怖を
感じざるを得ませんでした。

【ケース2:ケガ人Bさんの場合】

さて、
もう1人のBさん(30代・男性)はというと
なんと2日で腫れ・熱が引き3日目で回復
5日で戦列に復帰することができました。

見ていた村人たちはびっくりしました。

だって
1人は今際の際まで追い詰められ全治1ヶ月。

かたや5日で狩りに復帰。
両者とも同程度のケガ。

この違いはどこにあるんだ⁉︎
もう村人たちは必死のパッチです。

【2人のちがいを見つけろ!必死の観察】

2人の違いを全身くまなく
文字通り穴があくまで観察していきます。

そして彼らはついに見つけました!
2人の決定的な違いを。

それはケガをした時に
打撲がひどいと皮膚が裂け出血するのですが

大丈夫な方は出血しており
大丈夫でなかった方は内出血だけで
皮膚は裂けず出血はありませんでした。

ここから村人たちは以下の考察を得ます。

・内出血だけだと後腐れる
・皮膚が裂け出血があるとすぐ治る

という事は…

・皮膚が紫(内出血)になったら血を出せばいい

【まず結果ありきの東洋医学】

それからというもの狩りから帰ってきた男たちの
打撲の跡を徹底的に調べあげました。

内出血を見つけたら出血の有無を確認し
血が出ていなければ血を出す
という事を繰り返します。

そうすることで傷人を減らし狩りの人数を揃え
自分たちの集落の生存確率を増やしていったのですね。

どうやら私たちのご先祖さまたちは
この繰り返しで医療を積み上げていったようです。

んー、気が遠くなりそう(笑)

【ヨーロッパはまず血を抜く???】

現代でも肩こりや膝痛に対して内出血している部分の血を出す
「刺絡(しらく)」という療法があり、往時の雰囲気を残しています。

ちなみにヨーロッパの医学はつい300年ほど前まで
この血を抜くことをメインとした医療でした。

なんでも病気は体を悪魔に乗っ取られたからで
悪魔の取り憑いた血を抜けば治ると信じられていたようです。

こちらはかなり呪術的な意味合いを含んでいますが
東洋のそれも近いところがあったと思われます。

東洋と西洋の血に対する感覚のちがいも
面白い話がたくさんあるのでまたの機会に^^

さて、
その際、皮膚を切るメスとして使われていたのが
石でできたハンドアックス(石斧)でした。

当然、
道具の進化=現生人類の進化の歴史でもあります。
意外にも鍼の進化は人間の進化の過程にも関係あるものなんです。

それでは次回、このハンドアックスを中心とした
鍼の発展の歴史をくわしく見て行きましょう。

鍼の原初の姿【皇帝の鍼/施術編vol.10】

〜おわり〜

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